課題研究成果報告
本研究の目的は、臨床用量に大きな幅のあるプレドニゾロン錠について、人工知能(AI)を用いて用量過誤の判定モデルを構築することである。帯広厚生病院における5年間のプレドニゾロン錠の処方データを用いて、1日量が修正されるかどうかを判定するモデルを機械学習を用いて構築した。このモデルの判定精度を、単純な上限値設定モデルあるいはロジステイック回帰(LR)モデルと比較した。
上限値設定で判定する単純モデルのAUCは0.65であった。また、このモデルにおける最適上限値は6mg/日であった。最適LRモデルのAUCは0.84であり、前回処方情報(1日量および処方日数)を投入変数に加えることで判定精度は向上した。一方、前回との処方間隔は追加しても判定精度は向上しなかった。
1日量修正に関する判定モデルを4種の機械学習アルゴリズムで構築した結果、最も判定精度が高かったアルゴリズムはRandomForest(RF)であり、LRモデルよりも高い判定精度(AUC0.90)を示した。ハイパーパラメータを最適化し、交差検証を行った最適RFモデルは、Precision 0.98、Recall 0.83を示した。これは、本モデルにおいて1日量修正されると予想した処方の98%が実際に修正されること、および実際に1日量修正される処方の83%は本モデルで修正されると判定されることを示している。
プレドニゾロン錠は臨床用量の幅が大きく、用量に関する処方過誤が報告されている。これら臨床用量幅の大きい医薬品については、現在医療情報システムに実装されている単純な上限値設定のみで処方1日量の適正性を判定するには限界がある。今回、機械学習アルゴリズムを用いることで、高精度の1日量修正判定モデルを構築することができた。今回、構築した最適モデルが1施設に特化したモデルであるのか、他施設にも適応可能なモデルであるのか、今後、モデルの汎用性について検討する必要がある。